信号無視で書類送検も!? 取り締まり強化で再確認したい自転車の走行ルール

主な読者:通勤や業務で自転車に乗る社員がいる会社の総務担当者
課題:道路交通法違反や交通事故のリスクに備えてしっかり社員を教育したい
解決策:社員に対し、道路交通法、自転車の走行ルール遵守を徹底させる

1 自転車の交通違反に対する取り締まり強化

自転車の交通違反に対する取り締まりが全国で強化されています。これは、2022年11月1日付け「自転車の安全利用の促進について」(中央交通安全対策会議交通対策本部決定)を受けた動きです。
それに伴い、これまで警告で済まされてきた交通違反についても、刑事罰の対象となる交通切符(いわゆる「赤切符」)が交付されて、検挙されるというケースを想定しなければならなくなりました。警察庁「自転車の交通指導取締り状況」によると、2021年には警告が約131万件、検挙が約2万2000件でしたが、取り締まり強化によって検挙件数が増える可能性があります。
検挙されると、警察の事情聴取のために出頭しなければならず、その後、書類送検されることもあります。また、3年以内に2回以上検挙が重なると自転車運転者講習の受講を命じられることになります。悪質な違反行為や交通事故を起こした場合は、道路交通法の罰則の対象にもなります。「たかが自転車」というのは通用せず、業務に支障を来す恐れがあるのです。
この記事では、自転車の交通違反に対する取り締まり強化の内容と、刑事罰の対象となった場合にどうなるかについて紹介します。特に、通勤や業務で自転車に乗る社員がいる場合、この機会に改めて自転車の走行ルールを確認するようにしましょう。

2 積極的に「赤切符」の対象となる違反例

1)右側通行(逆走)
自転車は、道路交通法で「軽車両」に位置付けられており、歩道と車道の区別のある道路では、原則として車道の左側を通行しなくてはなりません。

【違反した場合】3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金

また、自転車道がある場合は、自転車道を通行しなくてはなりません。

【違反した場合】2万円以下の罰金または科料

2)徐行せずに歩道を走行

自転車が、例外的に歩道を通行できるのは次の3つの場合です。
1. 道路標識や道路標示で、自転車の通行が許されている場合
2. 車道や交通の状況を見て、車道を通行するのは危険だと判断される場合
3. 13歳未満の人、70歳以上の人、身体が不自由な人が運転している場合

【違反した場合】3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金(上記の歩道通行要件を満たさないのに歩道を通行した場合)

歩道はあくまでも「歩行者優先」です。自転車は歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければならず、歩行者の通行を妨げることとなるときは一時停止しなければなりません。

【違反した場合】2万円以下の罰金または科料

3)信号無視

繰り返しになりますが、自転車は、道路交通法で「軽車両」に位置付けられており、車用の信号に従うことになります。
一方、横断歩道を進行して道路を横断する場合や、歩行者用の信号に「歩行者・自転車専用」の標示のある場合は、歩行者用の信号に従わなければなりません。
分かりにくいのは、自転車横断帯がない横断歩道のある交差点を直進しようとしているとき、車用の信号が「赤」で、歩行者用の信号が「青」の場合です。歩行者用の信号が「青」だからといって、自転車に乗ったまま直進すると信号無視になります。自転車横断帯がない場合は横断歩道を横断できますが、歩行者がいるときは自転車から降りて押して渡ります(自転車を押して歩いている者は歩行者と見なされます)。

【違反した場合】3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金

4)一時不停止

自転車は、道路標識や道路標示で一時停止すべきことが指定されているときは、停止線の直前(停止線がない場合、交差点の直前)で一 時停止しなければなりません。
また、狭い道から広い道に出るときは、徐行しなければなりません。

【違反した場合】3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金

3 自転車運転者講習が命じられる危険行為

「右側通行(逆走)」「徐行せずに歩道を走行」「信号無視」「一時不停止」を含む一定の交通違反(危険行為)を繰り返し、3年以内に2回以上検挙された場合には、都道府県公安委員会により、自転車運転者講習の受講が命じられます。
危険行為として、例えば、「酒酔い運転」「ブレーキが利かない自転車の運転」「遮断踏切立ち入り」「安全運転義務違反」などの15項目が定められています。
■政府広報オンライン「知ってる? 守ってる? 自転車利用の交通ルール■

政府広報オンライン「知ってる? 守ってる? 自転車利用の交通ルール

中でも、つい、やってしまいがちなのが「安全運転義務違反」です。例えば、スマートフォンを操作しながらの運転、イヤホン・ヘッドホンをしたままの運転などが該当します。
スマートフォンを操作しながらの運転は、片手運転でふらつきやすいうえ、周囲を見ていないため、事故に遭ったり、歩行者にぶつかってけがをさせたりする恐れがあります。
イヤホン・ヘッドホンをしたままの運転は、音楽に気を取られて注意散漫になったり、後ろから近づいてくる自動車の音が聞こえなかったりして、事故に遭う危険性が高まります。

4 「赤切符」が交付されたら、どうなる?

自動車の場合、比較的軽微な交通違反については、いわゆる青切符が交付され、反則金を納付すると刑事罰を受けずに済む「交通反則通告制度」がありますが、自転車には適用されません。そのため、自転車の交通違反で取り締まりを受けると、警告で済まない場合は一律「赤切符」が交付されることになります。
警視庁や各道府県警察ウェブサイトによると、自転車の交通違反で「赤切符」が交付された場合、指定日に、指定場所に出頭し、警察による事情聴取を受けることになります。その後、書類送検され、検察による事情聴取を受けることになります。交通違反の内容によって異なりますが、検察官が略式命令を請求し、裁判所の略式命令、罰金の納付の順で手続きが進められます。
比較的軽微な交通違反については、初犯の場合は、反省しているかどうかを考慮のうえ、罰則なしで帰されることもあるようです。
前述の通り、危険行為を繰り返し、3年以内に2回以上検挙された場合には、都道府県公安委員会により、自転車運転者講習の受講が命じられます。この命令を無視して受講しない場合、5万円以下の罰金に処されます。

5 参考:自転車事故の予防と備えを忘れずに

1)「自転車指導啓発重点地区・路線」を確認しよう

警察庁によると、自転車関連事故(自転車が第一当事者または第二当事者となった交通事故)の件数は減少傾向にありますが、全交通事故に占める自転車関連事故の割合は2016年以降、増加傾向にあります。

■警察庁「自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~」■

警察庁「自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~」

こうした傾向を踏まえ、警視庁および各道府県警察は2022年3月、自転車の交通ルール遵守のための取り締まりを強化していく方針を示 しました。これに併せて、管内の交通量が多い道路や、生活道路などで自転車が関係する違反や事故が多いエリアをウェブサイト上で公表しています。

「自転車指導啓発重点地区・路線」というキーワードで検索し、確認するとよいでしょう。

2)ヘルメット着用を検討しよう

2023年4月1日から、全ての自転車利用者に対する乗車用ヘルメット着用の努力義務化などを内容とする改正道路交通法が施行されます。

自転車乗用中の交通事故で死亡した人の約6割が頭部に致命傷を負っています。あくまで努力義務であり、罰則はありませんが、ヘルメットの着用を検討してはいかがでしょうか。

■警察庁「頭部の保護が重要です~自転車用ヘルメットと頭部保護帽~」■

警察庁「頭部の保護が重要です~自転車用ヘルメットと頭部保護帽~

3)自転車向けの損害保険の加入も検討しよう

自転車で交通事故を起こした場合には、運転者に刑事上の責任も問われます。さらに、被害者を死傷させれば「重過失致死傷罪」に問われる恐れもあります。被害者に対しては民事上の損害賠償責任も発生します。
交通ルールをしっかり守って運転しなければならないことを、いま一度、社員に徹底させましょう。また、自転車向けの損害保険の加入 も検討するとよいでしょう。

■日本自動車連盟「[Q]自転車で道交法違反をした場合は?」■

日本自動車連盟「[Q]自転車で道交法違反をした場合は?」

■日本損害保険協会「自転車事故と保険」■

日本損害保険協会「自転車事故と保険」

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